専門家の声
Voices
KIKKAへ寄せて桜美林大学 准教授 林 秀紀
幼児教育において積み木が用いられたのは19世紀中頃からになります。ドイツの教育学者フリードリヒ・フレーベルが「恩物」という積み木を考案し、その後、日本にも紹介されました。フレーベルは幼児期の遊びの大切さを主張し、子どもたちが自ら考え、表現し、創造するために、様々な形や素材の遊具を組み合わせて遊ぶことを提唱しました。恩物の学習効果は、感覚・運動の発達促進、創造性と想像力の育成、集中力と注意力の向上などが報告されています。私の研究でも、積み木遊びによる幼児期の知育、身体能力の有効性を実証し、最近では高齢者のヘルスケアにも役立つことが分かっています。
この度発表された木のおもちゃ「KIKKA」は、花びらのシルエットを抽象化したシンメトリーの積み木で、正面から見ると4㎝の正方形におさまります。四辺のV字の切れ込みと、側面のV字の溝によって、縦、横、斜めに三次元的にパズルのように組むことができ、想像力を活かして飽きずに無限の遊びを創造できる商品です。積み木を一つずつ積む、重ねる、並べる遊びには、繊細な指先の動きと微妙なバランス感覚や集中力が必要になります。手と脳には深い関係があり、手や指を使うことは認知症の予防にも効果があると言われています。シンプルな2種類の部品で様々な立体のバリエーションを考えながら遊ぶと、さらに豊かな創造性が養われるでしょう。このようにKIKKAは、フレーベルが提唱した、知育、身体機能の発達、美的感覚を養うための造形要素がそのまま受け継がれており、子どもから大人まで長く楽しめる商品です。
素材で使用した木材は国内有数の銘木として知られる奈良県の吉野桧が採用されました。吉野桧は密植といわれる植林方法で、間伐を繰り返しながら長い年月をかけてゆっくりと成長していきます。そうすることで年輪の間隔が緻密になることから、木目が均一に真っ直ぐに伸び、日本的な美しさと高級感が感じられます。清潔感もあり抗菌作用についても実証されているようです。
KIKKAはこの吉野桧を用い、100分の1ミリの精度で加工され丁寧に作られています。実際に手に取ってみると、これまでの積み木ではけっして見ることができなかった精密さや高品質感を一目で感じていただけるでしょう。さらにもう一つの特徴は、吉野桧の特徴的な香り成分です。アロマオイルとしても多くの人に愛用されているように、人々の気持ちを落ち着かせ、リラックス効果を高めてくれそうです。
このように「KIKKA」は知的、情操的な教育効果のほか、審美的センスが備わっており、五感で楽しむことができることから、子どもから大人まで多くの人に愛される玩具としてお薦めできる商品です。
桜美林大学 准教授林 秀紀 博士
桜美林大学 准教授林 秀紀 博士
桜美林大学 芸術文化学群 准教授
東京造形大学卒業後、三菱電機デザイン研究所、サムスン電子デザインセンターにて家電製品、情報通信製品のデザインを行う。
2020年に京都工芸繊維大学大学院博士後期課程を修了し、博士(学術)取得 同年より現職
ヒューマンセンタードデザイン専門家として、「こどものためのデザイン」や「高齢者のためのデザイン」を主に研究しおもちゃコンサルタントとして活動する。
キッズデザイン賞。グッドデザイン賞など受賞も多数
日本デザイン学会、日本感性工学会、日本人間工学会所属